マレーシア 信仰の自由

マレーシア一般

マレーシアにおける信仰の自由,生まれたときにムスリムかを争う判決

2021年2月12日

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マレーシアはイスラム教の国だと聞きましたが,信仰の自由はあるのでしょううか?

マレーシアで生活する上で,宗教の理由で制限することがあるのですか?

こにゃん
こんにちは,こにゃん(@Konyan)です.

普通に生活する上では,とくに宗教を理由に行動を制限させることはないですよ.

 

Malaysiaでは,憲法で信仰の自由と表現の自由を保障しています.

しかし,Islam教に関する表現は注意が必要です.

 

この記事の内容は次になります.

本記事の内容

  • MalaysiaにおけるIslam教の位置付け
  • 信仰の自由と表現の自由
  • 生まれながらの仏教徒であることを証明した女性

 

 

MalaysiaにおけるIslam教

統計は古いのですが2010年時点の統計では,Malaysia人口の内,61%はIslam教信者です.

 

出典:Malaysia統計局 2010年人口統計と国勢調査

 

人口の大多数がMuslim(Islam教徒)であることから,政治,文化,生活のあらゆる面でIslam教の影響は強いです.

 

日本人にとっては,「信仰の自由」は当然の権利と認識されていますし,実際に自由を保障されていると感じていると思います.

日本人の大部分が「自分は無宗教である」と認識をしているため,「信仰の自由」は「信仰しない自由」とも解釈できます.

 

宗教を持っていることが大部分の大部分のMalaysiaでは少し事情が異なりますMalaysiaの信仰の自由について説明します.

 

Malaysiaにおける信仰の自由

Malaysiaには信仰の自由があります.

Malaysiaの連邦国憲法第11条にて,信仰の自由を定めています.

 

信仰する宗教選択の自由,宗教活動の自由,布教活動の自由などです.

 

したがって,「(Islam教を)信仰しない自由」は,Malaysiaでも認められています.

私のようなIslam教を信仰しない人間でも,宗教関連であまり制限や差別を受けることなく生活ができます.

 

Islam教は優越的な位置付け

憲法の中に信仰の自由はありますが,同時に信仰の自由と相反する条項が憲法にあります.

連邦国憲法第3条は,Islam教の国家への特別な地位を認めています.

 

この条文により,Islam教は他の宗教に対して優越的な立場に位置付けられます.

2017年,国連の査察団がMalayisiaを訪問した際も,少数派宗教に対する差別を指摘しています.

 

国連の報告書によると,信仰の自由と表現の自由に関して懸念が指摘されています.

  • 少数派宗教に対する差別
  • Islam教により制限された個人の自由による,子どもへの差別
  • Islam教から改宗しようとする人への差別
  • Islam教を棄教したへの批判と訴追
  • Non-Muslimが「神」を表す言葉を使用することを禁止
  • 権威批判に対する取り締まり

Forbes: Religious Freedom In Malaysia Under Microscope

 

笑い話のようではありますが,2020年12月「Happy Merry Christmas」と書かれたChristmas cakeを,Halal認証を受けたお店は飾ってはいけないという宗教団体からのお達しが出ました.

 

信仰の自由と表現の自由を考えると,不適切な通知に思えますが,Islam教の優位性があるので黙認されています.

 

日常生活では「Happy Christmas!」や「Happy Dewali!」などを話しても宗教警察に捕まることはありません.

12月はどこのshopping mallも,Christmas treeを飾って,赤い服を着て白い髭を生やした,おじさんがいますが,宗教団体からの抗議はないようです.

The Star: Halal-certified shops can't display cakes with Merry Christmas greeting, says Jakim

 

次に,自分がMuslimではないことを証明するために5年間かけて法廷で戦った女性の記事が目に留まりましたので最後に紹介します.

5年間かけて仏教徒であることを証明した女性

未婚Muslimの父と仏教徒の母から生まれたRosliza Ibrahimさん(報道時点39歳)が,自らはMuslimではないことを5年間かけて法廷で争った記事を紹介します.

Malay Mail: Woman born out of wedlock to Muslim father and Buddhist mother was never a Muslim, Federal Court hears

 

39歳のRosliza Ibrahimさんが持っている身分証には,宗教がIslam教と登録されています.

 

しかし,Roslizaさんは自身が仏教徒であると主張しています.

そして,生まれてから一度もMuslimであったことはない,と.

 

39年間の人生,Roslizaさんは社会的にはMuslimと認定されていますが,自身はMuslimであることを否定して生きてきました.

The case of Rosliza

 

ポイント

女性の(生物学的な)お父さんはMuslimで,一方のお母さんは仏教徒です.お父さんとお母さんは結婚することはないまま,Roslizaさんは生まれ,お母さんに育てられました.

Roslizaさんはお母さんと同じ,仏教徒になったと主張しています.

 

しかし,Malaysiaには,両親がMuslimの場合,子どもはMuslimになる宗教法律があります.片親の場合も同様です.

過去に結婚していた記録がある場合は,女性はMuslimであることになります.また,母親は仏教徒ですが,もし過去にMuslimであったとすると女性もMuslimとなります.

 

ちなみに,Muslimとnon-MuslimはMalaysiaでは結婚をすることができません.

 

本人の意思に関わらず,生まれで宗教が決まってしまうという制度は,日本人の私たちには馴染みがありませんので,今回の裁判の争点も私たちにとっては多少把握しにくいところがあるかもしれません.

裁判所

裁判での論点は,

  • Roslizaさんの両親は結婚をしていたか?
  • Roslizaさんを引き取った母親はMuslimであったことがあるか?
  • 係争は連邦裁判所か宗教裁判所が行うか?

 

女性側の論点は,次になります.

  • 両親は結婚をしておらず,Roslizaさん自身は合法的な子供ではないので,一度もMuslimであったことはない
  • 連邦直轄領および11の州で自身の母および母の血統にMuslim教に改宗した人がいる記録がない
  • 連邦裁判所の判決で,non-Muslimであるという宗教的な状態は,民事裁判所で決められるべきで,Syariah裁判所(Isram教に関する宗教裁判所)で決めることではない.

民事裁判所 vs 宗教裁判所

今回の連邦裁判所の判決で鍵となるのは,

ポイント

  • 高等裁判所が排他的な権力を持っているかどうか
  • 高等裁判所が唯一の裁判所として,Muslimかどうか判定できる権限を持っているか

Roslizaさんの弁護士は,Roslizaさんの申し立ては「Muslimの人がIslam宗教を棄教する」と勘違いされていると指摘しています.

 

結果的に,Roslizaさんの申し立ては勘違いゆえに,民事裁判書で議論されることなく,Syariah裁判所(宗教裁判所)へ一時的に移管されることになってしまいました.

Muslimに関するSelangor州の法律は彼女には適用されず,Selangor州のSyariah裁判所は彼女に対して法的な効力を持たないことを主張しています.

 

少し議論が巡回していますが,Islam教徒であるかどうかをめぐる裁判を宗教裁判所で行うのが正しいのか.宗教裁判所が裁くべきは,宗教(Islam教)に関する事柄です.

 

Roslizaさんの申し立てはそもそも,宗教裁判で取り扱うべきかどうかという指摘はもっともだと思います.

 

生まれながらのMuslimとは

Selengor州の法律顧問Datuk Salim Soibさんは,Selangor州のIslam教法令2004登録第2項に照らし合わせて,「Muslim」の定義とは「出産の際に両親のどちらか一方がMuslimである」と定められていることを指摘しています.

 

Selangor州の法律顧問は,RoslizaさんはMuslimの父から生まれた以上,第2項によりMuslim教であると主張します.

そして,宗教裁判所は,Roslizaさんの宗教について決める権限があると主張しています.

 

 

Roslizaさんは両親が結婚していなかったことを証明していますが,反対側の弁護士は,ICに登録された情報を参照して,「両親は結婚をしており,従ってRoslizaさんは生まれながらのMuslimである」と主張しています.

 

反対側のAbdul Rahim弁護士は.結婚に関する正式な証明書がないとしても結婚していたと出張しています.

Islam教によれば,双方が結婚に合意して,立会人を宗教裁判所に召喚することで登録がない結婚を認めています.

 

連邦裁判所は2020年12月,後日判決を言い渡すことを告げていますが,2021年2月判決が出ました.

 

判決:未婚のMuslimの父と仏教徒の母から生まれた女性はMuslimではない

5年に渡る裁判を得て,連邦裁判所で満場一致で女性がnon-Muslimである判決を言い渡しました.

Malay Mail:Malaysian woman born to Muslim father and Buddhist mother wins appeal in Federal Court, declared not a Muslim

The case of Rosliza 2

連邦裁判所は,Roslizaさんが提出した証拠を認めました.母親がMuslimであったことはなく,また両親が結婚した事実がないことが正式に裁判所で認められたことになります.

なぜ棄教を選ばなかったか?

Roslizaさんは生まれながらにしてMuslimでなかったことを証明しました.しかし,なぜ最初からIslam教を棄教しなかったのでしょうか?

Islam教を棄教して,仏教に改宗する方法もあったはずです.そうすれば,自分の認識する仏教徒になることができたはずです.

The case of Rosliza 3

しかし,MalaysiaではIslam教を棄教・回収することは簡単ではないのです.

Roslizaさんの場合もIslam教を棄教するということは,2つの点で選べなかったのでしょう.

  • 信仰していないIslam教を棄教するということは,Islam教を信仰していたことを黙認してしまう
  • Islam教を棄教することで,社会的に抹殺されてしまう

Islam教を改宗・棄教することはご法度

信仰の自由はありますが,宗教の対称性はありません.

例えば,他宗教からIslam教への改宗は認められていますが,逆は犯罪行為とみなされます.

 

Islam教の棄教は憲法第11条第3項で制限されているだけでなく,多額の罰金と懲役刑が伴います.

つまりIslam教の棄教者は社会的に抹殺されることになります.

 

MalaysiaのPerak州では,Islam教を棄教した人に対して,2年間の懲役か$730(日本円 約8万円)の罰金が課せられます.

 

このように,Malaysia憲法はIslam教を特別な位置付けにおいているがゆえに,Islam教徒に対して厳しい戒律を守らせています.

Muslimをやめるということに対して,宗教的にだけではなく,法律的にも厳しい制裁を課す制度になっています.

 

信仰の自由を憲法では認めていますが,実際はかなり厳しい制限があります.

 

まとめ

Malaysiaの人口のうち,60%以上がIslam教徒(Muslim)です.

Malaysiaで普段生活する上では,宗教のことで表現の自由が問題になることはありません.

 

Malaysiaでは信仰の自由が認められていますが,実際は大きな制限がかけられています.

Islam教に対する批判はもちろん,Islam教の棄教・改宗は法律上も罰せられることになります.

 

政治家は民主的な過程を経て選ばれていますが,選挙中も宗教団体への支援があり,政治家による宗教権威への配慮はみられます.

 

私が普段のMalayisa生活でIsram教と上手に付き合う上で気にしていることは,ぜひ下記の記事をご参考ください.

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こにゃん
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  • この記事を書いた人

こにゃん

【経歴】▶︎日本にて企業就職 ▶︎入社3年目マレーシア駐在 ●マレーシア駐在員 ●英語 TOEIC 950点,中国語 HSK 5級(中国語の方が得意かも?) ●旅行好き ●資産形成中 ■000万円,1億円資産ができたら経済的自由の道へ マレーシアお役立ち情報を発信しているので,Twitterもフォローしてね.

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