Malaysiaのワクチン接種準備状況について基本的な情報をまとめましたのでご参考になれば幸いです.
私はワクチン接種は義務になる可能性もあるかもと考えています.
この記事は,次のような方にお役に立てるように書いています.
こんな方におすすめ
- Malaysia在住でワクチン接種に関心のある方
- Malaysia在住で早く,MCOが早く終わることを祈っている方
- もうすぐMalaysiaに移住する方
この記事の内容は次になります.
本記事の内容
- ワクチン接種確保状況
- ワクチン接種計画
Malaysia政府のワクチン接種計画
本記事を書いている2021年2月時点で,2020年3月に発令されたMCO(都市封鎖)から早1年間が経とうとしています.
Malaysia政府は各国とワクチン供給確保に動いたおかげで,予想以上に早くワクチン接種がMalaysiaで始まりそうです.
Malaysiaのワクチン事情について,2021年2月時点の重要な点を9つ紹介します.
1.Malaysiaでは2021年2月下旬からワクチン接種開始
ワクチン接種の初回は今年2021年2月26日から接種が始まります.
国内経済は,強力な行動制限により低迷が続いています.
ワクチンが迅速に国民に行き渡り,国民の健康が守られてかつ経済活動が活発になることを祈っています.
Malaysiaに住んでいる私も,国内でワクチンがどのような計画で接種が進むのか気になっています.
ポイント
ワクチン接種の初回は今年2021年2月26日から接種開始
2.ワクチン接種枠確保,人口83%相当
US$ 5億(日本円 約525億円)の予算で,Malaysia政府は2,650万人(人口の83%相当)の国民にワクチンを購入する計画を立てています.
一人当たりに換算するとUS$19(日本円 約2,000円)です.
2021月2日時点での製薬会社各社とのMalaysia政府の契約・交渉状況をまとめました.
2月26日からは,感染症対策の第一線で働かれている人向けの接種が始まります.
中国とは優先的なワクチン供給合意がされている(後述)ので,おそらくSinovac社,CanSinoBio社との交渉は順調に進むのではないかと私は推測しています.
Malaysiaで接種するときに,どの製薬会社のワクチンはきっと選べないのでしょう.
いざワクチンが義務化されたら日本に帰国して接種するかどうか悩んでいます.
ポイント
- Malayisa政府,2021年2月時点で人口の83%分のワクチン確保
- 英国,米国,中国,ロシアのワクチン会社は6社から購入を予定
3.Malaysia国民の82%がワクチン接種に前向き
英国のdata解析企業YouGovによると,Malayisa国民の82%がワクチン接種に前向きな回答を寄せています.
→ Prime Minister's Office Of Malaysia: COVID-19 vaccine to be given free to Malaysians – PM Muhyiddin
政府による度重なる行動制限令(MCO)により国内経済が停滞,教育機関は閉鎖されたことによる日常生活への影響が大きすぎました.
ワクチンによる感染症の抑え込みも理由ではありますが,次に来る理由だと思います.
Malaysia国内の感染症による累計死亡者数 867名(2021年2月7日時点)は,米国の46.2万人(同時点)と比べても桁が3つ低く,感染症への恐怖感は比較的低いように感じます.
ポイント
Malayisa国民の82%がワクチン接種に前向きな回答
4.Malaysia国内では反ワクチン世論は下火
日本では過去のワクチンによる副作用の被害があったことを例に挙げて,後ろ向きの世論を報道機関が形成しています.
武漢肺炎に関するワクチンがもたらす副作用について,未知の領域ではあります.
Malaysiaの報道機関は良くも悪くも副作用についてあまり積極的に報じようとしているようには見えません.
Malaysia国民からの副作用への疑問の声がないわけではありませんが,拒否反応といった声は少ないです.
政府は反ワクチン運動に対して法的な処置を取る検討をしていると発表しています.
→The Strait Times: Government mulling legal action against anti-vaxxers, says Muhyiddin
ポイント
- マレーシア国内では反ワクチン運動はあまり活発ではない
- 反ワクチン運動に対して政府は法的処置を検討中
5.Malaysia国民のワクチン接種は無料かつ任意
Muhyiddin首相は,Malaysia国民は無料でワクチン接種ができるようにすると公言しています.
→ Prime Minister's Office Of Malaysia: COVID-19 vaccine to be given free to Malaysians – PM Muhyiddin
ワクチン接種は個人の意思
ワクチン接種を義務付ける方向では検討しておらず,あくまで接種は個人の意思に基づく任意性にするとのことです.
首相自身,反ワクチン運動について言及して,政府は国・州単位でのワクチンによる集団免疫の重要性を公共広告していくと意気込んでいます.
将来的には,MySejahteraを通してワクチン接種の合意書に署名する形にすると,Khairy科学技術革新省大臣は述べています.
→Malay Mail: Khairy: Covid-19 vaccine won’t be mandatory
ワクチン接種の義務化の可能性
懸念は非常事態宣言の法的効力のもと,ワクチン接種が義務化する可能性を法律の専門家は指摘しています.
政府は,ワクチン接種は任意であると繰り返し述べていますが,今後の方針変更がないか注意深く見守りたいと思います.
Malaysia非常事態宣言の下で、ワクチン接種を義務化することは可能。
ワクチン有効性と副作用による重症化率をみながら義務化は慎重に議論すべき。新型肺炎ワクチンに関しては勇足。
接種が必要な人がいることは理解している一方、知る権利をまずは尊重して欲しいな。https://t.co/McW51ap6gW
— こにゃん 🇲🇾 マレーシア再入国&ホテル隔離 (@Konyan_blogger) January 18, 2021
ポイント
- Malaysia国民はワクチン接種は無料かつ任意
- 感染症対策アプリMySejahteraを通してワクチン接種を予約
6.ワクチン接種計画,2021年2月までに人口80%目標
2021年2月4日の国民向け演説の中で,Muhyiddin首相はCovid-19ワクチンの接種計画を発表しました.
5月からは18歳以上国民へのワクチン接種
2021年2月26日から第1段階の接種が開始して,2022年2月までに人口の80%の接種を目指す計画です.
18歳以上の健康な国民への接種は5月以降となります.
先程の,製薬会社のワクチン供給計画と合わせてみると,後半に接種する人はSinovac社(中),CanSinoBio社(中),Gamaleya社(露)のワクチンが割り当てられる可能性が高くみえます.
政府は集団免疫を獲得するために人口の80%ワクチン接種を目標としています.
人口の80%のためには18歳以上は全員接種?
人口20%の人はワクチン接種をしないで良いかというと私は懐疑的です.
なぜなら政府は人口20%の非接種枠を,ある人たちのための”余白”にすると私は考えています.
それは,「18歳未満の子ども」と「妊婦」です.
ワクチンの治験でも,18歳未満の子どもと妊婦は対象外となっています.
政府も子どもに対しては接種をしないことを明言しています.同じ理由で妊婦へのワクチン接種も見送るでしょう.
→Malay Mail: Children won’t get Covid-19 vaccine since not tested by clinical trials, says minister
18歳未満の子どもだけで,Malaysia人口の30%近くに達します.
つまり,国民80%ワクチン接種は実際はできません.
全員に接種を義務化したとしても,対象枠の人たちが30%いるのですから集団免疫のための接種数に達しません.
私の推測ですが,Malaysia政府は人口80%のワクチン確保に本腰を入れているので,任意接種でワクチンを余らせるとは思えません.
他国に余ったワクチンを融通するという可能性はありますが,MCO 2.0まで発令して国内経済を停滞させた現政権に他国にかまっている余裕はないでしょう.
「18歳未満の子ども」と「妊婦」以外の,Malaysia国民と在Malaysiaの外国人は一律義務的に接種をすることになるのではというのが私の見立てです.
ポイント
- 2021年5月から18歳以上の国民にワクチン接種開始
- 2022年2月までに人口の80%のワクチン接種を目指す
7.外国人のワクチン接種は無料に,優先順位はMalaysia人の次
2月11日,Malaysia保健省が発表を行い,外国人のワクチン接種は無料になりました.
Program Imunisasi #COVID19 Kebangsaan akan turut melibatkan pemberian vaksin kepada bukan warganegara yang menetap di Malaysia secara percuma.
Namun, keutamaan pemberian vaksin adalah kepada warganegara Malaysia.
Kenyataan penuh @JKJAVMY pic.twitter.com/V3pSA5l4aG
— KKMalaysia🇲🇾 (@KKMPutrajaya) February 11, 2021
Malaysiaに居住する外国人にも無料でワクチンを接種しますが,優先順位はMalaysia人の次となります.
外国人の接種が義務か,任意かはまだ発表がありません.
集団免疫を目指すMalaysia政府としては,人口の10%近くに達する外国人たちがワクチン未接種のまま放置するとも思いません.
過去の集団感染も外国人労働者を中心に起こったことを考えても,外国人向けにワクチンを積極的に接種すると私は予想しています.
ポイント
Malaysia在住の外国人に対してもワクチンを無料で接種
8.中国とは優先的なワクチン供給枠確保合意
昨年2020年11月18日,Malaysia政府は中国と武漢肺炎のワクチンを共同開発する合意をしたと発表しました.
合意に基づき,Malaysiaは中国が開発したワクチンを優先的に供給してもらうことになっています.
中国の製薬会社Sinovac社,CanSinoBio社とはワクチン供給枠について交渉中になっていますが,両国間の合意に基づいて順調に協議が進むものと思われます.
11月18日の1ヶ月前の10月12日に,王毅中国外相はMalaysiaを訪問しています.
王毅中国外相はMalaysia訪問中にMalaysia政府への”お土産”をもたらしました.
- Covid-19のワクチン優先支給
- Palm油の大量購入
ワクチン確保が必須の項目であることはもちろんのことですが,Malaysiaの主要輸出項目Palm油はEU諸国が輸入に制限をかけたためMalaysia関係者は頭を抱えていました.
Malaysiaが喉から手が出るほど欲しい上記2条件を提示した上で,中国はMalaysiaの一帯一路への参画合意を得たとされています.
詳しくは,下記記事をご覧ください.
-
マレーシア政府,中国と新型肺炎のワクチン開発協力合意
続きを見る
ポイント
中国政府はMalaysiaに優先的にワクチン供給を約束,引き換えにMalaysiaは一帯一路への参画
9.都市部55箇所にワクチン用の超低温保管庫設置
Pfizer社のワクチンは,-75℃の超低温での保管が必要となっています.
ワクチンを保管するために,RM 6.7百万(日本円 約1億7千万円)を投資して,55個の超低温保管設備を購入したと,Khairy科学技術革新大臣は発表をしました.
→Soyacincau: Khairy: Govt to spend RM6.7 mil on special freezers to store Pfizer COVID-19 vaccine
55個の超低温保管設備は都市部に設置される予定です.
Pfizer社のワクチンは,超低温保管設備を設置する都市部を中心に接種を進めます.
一方で,地方部に関しては,比較的取り扱いしやすい温度で保管できるAstraZeneca社のワクチンを供給していくことになっています.
ポイント
- 都市は超低温保管が必要なPfizer製ワクチンを供給
- 地方は比較的温度の取り扱いが容易なAstraZeneca製ワクチンを供給
まとめ
武漢肺炎が蔓延し始めた1年前から振り返ると,あっという間にワクチン供給の目処がたちました.
Malayasiaのワクチン接種に関して重要なことをまとめました.
ポイント
- ワクチン接種の初回は今年2021年2月26日から接種開始
- Malayisa政府,2021年2月時点で人口の83%分のワクチン確保
- 英国,米国,中国,ロシアのワクチン会社は6社から購入を予定
- Malayisa国民の82%がワクチン接種に前向きな回答
- マレーシア国内では反ワクチン運動はあまり活発ではない
- 反ワクチン運動に対して政府は法的処置を検討中
- Malaysia国民はワクチン接種は無料かつ任意
- 感染症対策アプリMySejahteraを通してワクチン接種を予約
- 2021年5月から18歳以上の国民にワクチン接種開始
- 2022年2月までに人口の80%のワクチン接種を目指す
- Malaysia在住の外国人に対してもワクチンを無料で接種
- 中国政府はMalaysiaに優先的にワクチン供給を約束,引き換えにMalaysiaは一帯一路への参画
- 都市は超低温保管が必要なPfizer製ワクチンを供給
- 地方は比較的温度の取り扱いが容易なAstraZeneca製ワクチンを供給
今後はどのようにワクチン接種対象者を決めていくかが重要になっていきます.
Khairy科学技術革新大臣がワクチン接種を推進する立場に指名されました.
ワクチンの供給が始まると,ワクチンの輸出管理,品質管理,接種対象者管理など行政の負担が一気に増します.
ぜひ行政を横断して,ワクチン接種の計画を大胆かつ緻密に実行することを期待しています.
Khairy Appointed Covid-19 Vaccine Tsar
The Prime Minister also says the general public can get vaccinated from May this year.https://t.co/sRfRIJM7Dw
— Boo Su-Lyn (@boosulyn) February 4, 2021
ワクチンが広く接種が進み,以前のような日常生活が戻ってくるまで1年以上は時間がかかりそうです.
2021年8月時点で,計画通りにワクチン接種計画が進んでいるか途中経過をまとめましたので,ぜひ次の記事もあわせてお読みください.
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マレーシアのコロナウイルス・ワクチン接種データ備忘録【2021年8月】
続きを見る