Malaysiaでは4月中旬以降,陽性者数が急拡大を続けており,5月のHari Raya休暇前に全国的なMCO 3.0(行動管制令)が1ヶ月間発令されています.
Malaysiaに住んで3年の私が現地の感染状況を踏まえて,東南Aisa各国との感染状況比較についてまとめながら感想を書きたいと思います.
この記事の内容は次になります.(内容は5月14日現在のものです.)
本記事の内容
- マレーシアは,東南アジアの中で人口あたり陽性者数 第1位
- 人口あたりの新型コロナ死亡者について,マレーシアは東南アジア第2位,急増加中
- マレーシア在住者3年の私としては,感染が身に迫っていることを感じるが,身の危険を感じるほどではない
Malaysiaは東南Asia 1位の人口あたり陽性者数(2021年5月)
東南Asia(下のlist 10カ国)における,各国人口あたりの感染状況を調べてみました.
東南Asia諸国
- Malaysia
- Philipines
- Thailand
- Cambodia
- Indonesia
- Laos
- Singapore
- Brunei
- Vietnam
- Myanmar
参考のために,東南Asia各国のなかに日本のdataも追加をしました.
本記事のgraphは,下記のwebsiteを参照しました.
→Our World in Data Coronavirus Pandemic (COVID-19)
国別の感染状況に関する比較をしたいときに視覚的にわかりやすいgraphを作れます.
ご興味のある方はぜひ分析にお役立てください.
人口100万人あたりの陽性者数
まずは,人口100万人あたりの陽性者数の推移です.
- 横軸は,日付(2021年1月1日から5月14日)
- 縦軸は,人口100万人あたりの新規陽性者
折線は各国の人口100万人あたりの陽性者数を表しています.
Graphをみて一目瞭然のように人口あたりの陽性率では,Malaysiaが第1位となっています.
第2位のPhillipinesと比較しても,2倍以上の陽性者数を示しています.
東南Asia各国で比較したときに,Malaysiaでの人口あたり新規陽性者が圧倒的に多いことは事実のようです.
陽性者隔離施設の逼迫
陽性反応が出た人のうち,軽症状を隔離するためのMAEPS隔離施設はすでに収容人数の限界に達しようとしています.
原因は,4月中旬以降の陽性者の急増によります.
The Selangor Health Department says the situation at the MAEPS 2.0 quarantine centre has become challenging, on the rise of Category 3 patient admissions.
It is looking to increase bed capacities and improve admission processes, following complaints and feedback online. pic.twitter.com/ZHZqwR6Iik
— BFM News (@NewsBFM) May 16, 2021
陽性反応が出て隔離施設に入った日本人の方の体験記を読みましたが,公共の隔離施設内はなかなか過酷であるようです.
1日あたりの陽性者数以上に,隔離施設の空き状況がなくなっている状況を聞くとより国内の受け入れ体制が逼迫していることを感じます.
感染群の変遷
2020年の9月ごろから,主に工場,港などの外国人労働者の宿舎で集団感染が頻発していました.
その頃は,まだ特殊な環境でのみ病原菌が蔓延しておらず,市中への感染は限定的と思っていました.
当時は一人でも生活圏内に陽性者が出現すると大騒ぎになっていました.
しかし,2020年末以降から市中での感染が広がりを強く意識するようになりました.
2021年になり,私の知り合いでも陽性反応が出た人がいます.
私と直接面識のある人ではないのですが,普段は職場と自宅の往復のみで外食も少なく見知らぬ人との接触は少なかったにも関わらず,新型肺炎の症状が出たために検査をしたところ陽性反応が出たと聞いています.
この一件からも病原菌は身近なところに迫っているなと痛感しました.
そして何よりも周囲も大騒ぎすることもなく,冷静に身近な陽性事例に対応していた点も大きな変化です.
誰でもいつかは感染するかも,という空気を私は感じます.
感染を徹底していようが感染をするときはするかもという感覚です.
人口あたりの検査数
「陽性者数 = PCR検査数 * 陽性率」と数式で表せます.
無症状者を含めてPCR検査を実施しています.
特に,人口あたりの10%いる外国人労働者に対しても半強制的に検査を行うなど徹底的に陽性者を発見する国の方針になっています.
(日本も加えた)東南Asiaの人口1,000人あたりの一日PCR検査数の推移graphを提示します.
Singaporeは,人口あたりのPCR検査数が飛び抜けて多いことがわかります.
後述しますが,Singaporeの陽性率はほぼ0%となっているため,陽性者数は相対的に多くありません.
Malaysiaは,東南Aisaで第2位の人口あたりPCR検査を実施しています.
Phillipinesに比べて約6倍,日本に比べて約3倍多いPCR検査をMalaysiaでは実施しています.
Malaysia国内に関しては,症状の有無に関わらずPCR検査を積極的に感染予防の観点から行っています.
- 政府主導で外国人労働者への集団検査
- 無症状者でも濃厚接触者と疑われる人の検査
陽性率
次にPCR検査あたりの陽性者数である陽性率についてみていきます.
「陽性者数 = PCR検査数 * 陽性率」とあるように,陽性率の高さは陽性者数に直結します.
陽性率を10%超えているのは,PhippinesとIndonesiaの2カ国.
陽性率を10%下回っている日本とMalaysiaは,なだらかに陽性率上昇の傾向を見せています.
Malaysiaの陽性率が特別高くはありません.
症状の有無に関わらず検査を進めていいることから,他の国と比べて相対的に陽性率が高くないことは納得がいきます.
注目したいのはSingaporeの人口あたり陽性率です.
ほぼ0%.
推測ですが,Singaporeは感染封じ込めのために,症状の有無に関わらず感染予防的な観点からPCR検査を行っているものと思われます.
Singaporeの人口は570万人と,東京の半分以下です.
行政の対応としても,これくらいの人口規模であればPCR検査および陽性者の追跡が徹底して行うことができるのかもしれません.
感染症を抑え込んでいる状況であれば,予防的なPCR検査は少しは合理性があるような気がします.
ただし,感染が拡大している局面でPCR検査によって感染をくい止めるという方策については私は懐疑的です.
新型肺炎による死亡者の増加
陽性者数よりも,感染症による死亡者数の方がより感染症の実態を表しているように思います.
東南Asiaの中で,100万人あたりの死亡数をまとめた統計dataを示します.
- 横軸は,日付(2021年1月1日から5月14日)
- 縦軸は,人口100万人あたりの新規死亡者数
]折線は各国の人口100万人あたりの新規死亡者数を表しています.
人口あたりの死亡者数という指標では,Phillipinesが東南Asiaで第1位となっています.
一方で,第2位のMalaysiaにおける死亡者数が急増していることがわかます.
陽性者の波としては前回2021年1月にもありましたが,2021年5月現在の感染症の波は死亡者数ですでに前回を大きく上回っています.
そして偶然だと思うのですが,日本とMalaysiaの人口あたりの死亡者数推移は近似しています.
私は死亡者数の増加は注意深くみています.
前回2021年1月の感染拡大でも残念ながら死亡者数は増加しましたが,今回の方が死亡者数増加の加速度は大きく不安を呼び起こしています.
全国にある新型肺炎専用のICU(集中治療室,intensive cure unit)占有率は80%を超えており,今後の医療逼迫が心配されています.
→Straits Times:Malaysia's ICUs at 80% capacity, some hospitals full as Covid-19 patients on the rise
Malaysia保健省のDr. Noor Hisham局長は,「このまま感染が拡大すると,命の選別をしなくてはならない局面に差し掛かっている」と警告を鳴らしています.
Malaysia国内で尊敬を集めているDr. Noor Hisham保健省局長の発言だけに感染症の深刻化は国民に重く受け止められています.
まとめ:Malaysiaは東南Asia諸国の中でも感染状況が悪い
最後に,感染拡大している国,米国,Brazil,India,Malayisa,日本を比較してみたいと思います.
人口あたりの陽性者数では,依然Brazil,Indiaが際立っって多い人数を記録しています.
Indiaに関しては,2021年3月以前はむしろMalaysiaよりも低い陽性者率だったことに驚きます.
一方のMalyaisaの人口あたり陽性者数はBrazil,Indiaの半分ほどですが,5月中旬になり米国を追い越しています.
Malaysiaは1月時点では米国の6分の1ほどの人口あたり陽性者数しかいませんでした.
米国は1月以降急激な陽性者の減少を示してた一方,Malaysiaは4月以降増加を続けていることからついに5月中旬で二国の順位は入れ替わってしまいました.
人口あたりの死亡者を見ると,また見え方が変わってきます.
Brazilの人口あたり死亡者数が群を抜いて多いことがわかります.
対照的に,Malaysiaは,先ほど人口あたりの陽性者数は米国を抜いていましたが,死亡者数ではまだ半分ほどの水準です.
米国は減少傾向を,Malaysiaは増加傾向を示しているので,死亡者数の傾向についても注意が必要です.
Malaysia国内で生活している身としては,ますます武漢肺炎が身近に迫ってきていることを感じます.
政府が行動制限令を強めて,制限令の違反者摘発,罰金科料を徹底するなど,政府の焦りを強く感じます.
身に危険を感じるということは幸にしてありませんが,引き続き健康には気をつけて感染症対策を徹底していきたいと思います.
ここまで本記事をお読みいただきありがとうございます.